「昆虫食」の実地研究を20年以上続ける
立教大教授 野中 健一さん(44)
朝日新聞 2009年3月2日 月曜日 朝刊 「ひと」
オオスズメバチの揚げ物、ザザムシやカイコのつくだ煮、クロスズメバチのおにぎり。日本の伝統的な昆虫食を薦める時も、虫嫌いなら顔をそむける体験を語る時も、笑顔だ。
「一番おいしかったのはラオスのカイガラムシ。生チョコのようにとろけるんです。カメムシを生で食べた時は、脳の中に花が咲いた・・・・・・・・」
学生時代にアルバイト先で食べたハチの幼虫が原点だ。採ってくれた年配の男性の笑顔に、「ハチ採り名人」だった亡き祖父の記憶が重なった。「自然の恵みをいただく」喜びにひかれ、研究の道へ。習性や地形から巣を探す「ハチ追い」で野山を駆け回った。
単なる栄養源ではなく、季節の食材として調理を工夫し、採りすぎて枯渇させない知恵も磨く。市場を意識して商品にし、魚釣りのように採るのを楽しむ。虫を食べ、虫に魅せられ、虫と生きる人との出会い。
アジアやアフリカなどの約20カ国も巡り、食べた昆虫は40種類ほど。
「日本の昆虫食は世界にも類がない総合文化」と確信し、「昆虫食先進国ニッポン」という本にまとめた。
文化環境学の授業で昆虫料理を出す。「食べない立場」を認めたうえで、異文化や身近な自然への理解を深める格好の教材と考えるからだ。
昆虫を食糧資源にと注目する国連食糧農業機関(FAO)の会議にも出席する。「『困ったなら食べろ』とは言いたくない。成分を詳しく調べ、おいしい理由を解明したい」
文・写真 小石勝朗

